井枝尼 理出亜

吉松家の倉が燃えてるぞ
早く消せ!

あいつら何が革命だふざけだことしやがって

 土地を分けるとか大言壮語のはてにそれかい。

修道院の鐘がなってやがるなんなんだ一体

なんだあの歌は

主よ、わたしをあなたの平和の道具としてください。憎しみのある所に、愛を置かせてください。侮辱のある所に、許しを置かせてください。分裂のある所に、和合を置かせてください。誤りのある所に、真実を置かせてください。疑いのある所に、信頼を置かせてください。絶望のある所に、希望を置かせてください。闇のある所に、あなたの光を置かせてください。悲しみのある所に、喜びを置かせてください。主よ、慰められるよりも慰め、理解されるより理解し、愛されるよりも愛することを求めさせてください。なぜならば、与えることで人は受け取り、忘れられることで人は見出し、許すことで人は許され、死ぬことで人は永遠の命に復活するから

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派遣された会社の倉庫
いや冷蔵庫

地方から搬入された野菜の箱詰めをたんたんとする。

 カイロも自腹で作業を続ける。

 工場、事務所、私は
様々な場所を転々とする

 しかし、私はどんな場所においても、世界の地図を見る。パンを得、血を流すために。
 
 バッグの中に、聖書と資本論を忍ばせて。

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 また、あの夢を見た、神も仏も信じないのに。

 児童養護施設に預けられて
形見は、聖書と資本論と鍵つきの木箱。

そして井枝尼 理出亜(イエナ リデイア)と言う名前だけ

 私は資本論で聖書を読む
パンと血を得るために、あの繰り返される歌声を粉々にするために
 
 海風に吹かれて私は散乱する。井枝尼 理出亜は何処にでも現れる。